「藤乃さん? とりあえず、車に移動しませんか。ここ、うちの店の前なので……ちょっと邪魔……目立ちますし」
「花音!? 言い方ってあるだろうが! お前が泣かせたんだぞ!?」
父が目を丸くして振り返る。そんなこと言われても。
「私、泣いてる人を慰めたことってないんだよね」
「そうかもしれんけどさ!?」
「とにかく、行きますよ藤乃さん。私、意外と力あるって言いましたよね? 本気出せば、百キロ近くまで持ち上げられますから。台車で運ばれたくないなら、自分で立って歩いてください。……それとも、お姫様抱っこがいいですか?」
「うちの娘、怖……なんでこんなに母ちゃんそっくりなんだ……?」
野次馬みたいになってる父を無視して、私は立ち上がった。
すると藤乃さんが私のズボンの膝のあたりを掴んだ。
「……手、つないでほしい」
「わかりました。行きましょう」
掴まれた手をそっとほどいて、私の手に重ねる。少し迷ってから、恋人みたいに指を絡めた。
藤乃さんが、ゆっくりと顔を上げた。鼻と頬が赤くなっていて、父の言うとおり、本当に泣き虫な男の子みたいな顔だった。
ポケットのハンカチを差し出すと、つないでない方の手が受け取った。
「行きましょう」
「……うん」
片手に藤乃さん、片手に台車。なんだか、大荷物を抱えたお母さんみたいな気分で、駐車場へと向かった。
途中で知り合いの農家さんにあったけど、
「藤乃ちゃん、ほんとに相変わらず泣き虫だねえ」
「花音ちゃん、お母さんにそっくりになってきたね……」
みんなして、父と同じようなことを言う。
泣いていても、からかわれたりしないのは――きっと、藤乃さんの人柄なんだと思う。
私はそういうところが好きなんだ。
だからこそ、悲しませたくないし、嫌なことがあったら、ちゃんと話さなきゃ。
藤乃さんは、そういうのを嫌がる人じゃないから。
須藤さんのトラックに着くと、藤乃さんが鍵を取り出して荷台を開けた。花を積み終えてから、藤乃さんを運転席に座らせる。
横に立って、藤乃さんの脇腹のあたりに、そっと体を預けた。
もっとくっついていたかったけど……なんていうか、それが私の精一杯だった。
「花音!? 言い方ってあるだろうが! お前が泣かせたんだぞ!?」
父が目を丸くして振り返る。そんなこと言われても。
「私、泣いてる人を慰めたことってないんだよね」
「そうかもしれんけどさ!?」
「とにかく、行きますよ藤乃さん。私、意外と力あるって言いましたよね? 本気出せば、百キロ近くまで持ち上げられますから。台車で運ばれたくないなら、自分で立って歩いてください。……それとも、お姫様抱っこがいいですか?」
「うちの娘、怖……なんでこんなに母ちゃんそっくりなんだ……?」
野次馬みたいになってる父を無視して、私は立ち上がった。
すると藤乃さんが私のズボンの膝のあたりを掴んだ。
「……手、つないでほしい」
「わかりました。行きましょう」
掴まれた手をそっとほどいて、私の手に重ねる。少し迷ってから、恋人みたいに指を絡めた。
藤乃さんが、ゆっくりと顔を上げた。鼻と頬が赤くなっていて、父の言うとおり、本当に泣き虫な男の子みたいな顔だった。
ポケットのハンカチを差し出すと、つないでない方の手が受け取った。
「行きましょう」
「……うん」
片手に藤乃さん、片手に台車。なんだか、大荷物を抱えたお母さんみたいな気分で、駐車場へと向かった。
途中で知り合いの農家さんにあったけど、
「藤乃ちゃん、ほんとに相変わらず泣き虫だねえ」
「花音ちゃん、お母さんにそっくりになってきたね……」
みんなして、父と同じようなことを言う。
泣いていても、からかわれたりしないのは――きっと、藤乃さんの人柄なんだと思う。
私はそういうところが好きなんだ。
だからこそ、悲しませたくないし、嫌なことがあったら、ちゃんと話さなきゃ。
藤乃さんは、そういうのを嫌がる人じゃないから。
須藤さんのトラックに着くと、藤乃さんが鍵を取り出して荷台を開けた。花を積み終えてから、藤乃さんを運転席に座らせる。
横に立って、藤乃さんの脇腹のあたりに、そっと体を預けた。
もっとくっついていたかったけど……なんていうか、それが私の精一杯だった。



