気まずそうに顔を曇らせる花音ちゃんを見て、俺は思わず男たちの方へ視線を向けた。
スーツ姿の男たちのうち、一人がへらへら笑いながら口を開いた。
「あれ、マジで男連れ? あのデカ女がさ、ウケるわ」
「……失礼ですが、どなたですか?」
「俺、こいつの高校んときのクラスメイトなんすよ。女かどうかもわかんないゴリラだったのが、いっちょ前に色気づいてたからさ、ついな」
あまりに無礼な言葉に、どう反応すべきかわからなかった。
拳を握りかけたそのとき、背中の裾がきゅっと引かれて、我に返る。
「……そうですか。ウッドスロープの社員の方々って、そういう民度なんですね」
「え? は?」
男の首に下がった社員証をちらと見て、できるだけ穏やかに微笑んだ。
「坂木さんにはいつもお世話になっております。須藤からよろしくとお伝えください。それとも、江里の方からご挨拶差し上げたほうがよろしいでしょうか?」
男たちと同じように、花音ちゃんもぽかんとした顔で固まっていた。
「花音ちゃんの親父さん、今日地域の青年会に出てるでしょ? それ、うちの親父とウッドスロープ社長の坂木さんも参加してるんだよ。ウッドスロープが入ってるビルの持ち主の江里さんも出てるんじゃないかな。あ、理人のおじいさんね」
「あ……そうだったんですね……?」
「まさか、地域密着を掲げる企業の方が、地元の地主にこんな無礼を働くなんて……そんなこと、ありませんよね?」
とどめに穏やかに微笑むと、彼らは顔を見合わせた。
「や、その……知った顔がいたから、ね。ちょっと挨拶にと思って……。し、失礼します……」
「一昨日いらしてくださいね」
男たちが去るのを確認してから、立ったまま花音ちゃんの顔を覗き込んだ。
「花音ちゃんのジョッキも空だから、お代わりを取りに行こう」
「……はい」
スーツ姿の男たちのうち、一人がへらへら笑いながら口を開いた。
「あれ、マジで男連れ? あのデカ女がさ、ウケるわ」
「……失礼ですが、どなたですか?」
「俺、こいつの高校んときのクラスメイトなんすよ。女かどうかもわかんないゴリラだったのが、いっちょ前に色気づいてたからさ、ついな」
あまりに無礼な言葉に、どう反応すべきかわからなかった。
拳を握りかけたそのとき、背中の裾がきゅっと引かれて、我に返る。
「……そうですか。ウッドスロープの社員の方々って、そういう民度なんですね」
「え? は?」
男の首に下がった社員証をちらと見て、できるだけ穏やかに微笑んだ。
「坂木さんにはいつもお世話になっております。須藤からよろしくとお伝えください。それとも、江里の方からご挨拶差し上げたほうがよろしいでしょうか?」
男たちと同じように、花音ちゃんもぽかんとした顔で固まっていた。
「花音ちゃんの親父さん、今日地域の青年会に出てるでしょ? それ、うちの親父とウッドスロープ社長の坂木さんも参加してるんだよ。ウッドスロープが入ってるビルの持ち主の江里さんも出てるんじゃないかな。あ、理人のおじいさんね」
「あ……そうだったんですね……?」
「まさか、地域密着を掲げる企業の方が、地元の地主にこんな無礼を働くなんて……そんなこと、ありませんよね?」
とどめに穏やかに微笑むと、彼らは顔を見合わせた。
「や、その……知った顔がいたから、ね。ちょっと挨拶にと思って……。し、失礼します……」
「一昨日いらしてくださいね」
男たちが去るのを確認してから、立ったまま花音ちゃんの顔を覗き込んだ。
「花音ちゃんのジョッキも空だから、お代わりを取りに行こう」
「……はい」



