市場に着いたら母親と手分けをして花を仕入れる。
 お盆前なので、菊やカーネーション、リンドウを少し多めに仕入れる。スターチスと、そろそろハスも入れた方がいい。ケイトウも欲しいけど出てるかなあ。
 地域によっては七月中にお盆をやる地域もあるから、帰ったら仏花用のブーケをいくつか作っておきたい。
 最後に由紀さんのところに行くと、今日は親父さんと瑞希がいた。

「おはよ。ケイトウとワレモコウ、ある?」
「どっちも、まだねえな。ひと月くらいしたら出せる。花音が明るい色のを育ててるから、できたら藤乃も見てやって」
「もちろん。楽しみにしてる。じゃあ、こっちのトルコキキョウちょうだい」
「あいよ」

 台車に花を積んでいると、母親がやって来て、あたりを見回した。

「花音ちゃん、今日は来てないのね」
「今朝は畑の水やりしてます。花音が育ててる種が発芽したから、様子を見たいって」

 瑞希が言うと、母親が振り返った。

「……藤乃、知ってたの?」
「……まあ」

 母さんと瑞希が、同時にニマッと笑ってこっちを見る。
 ……野次馬は勘弁してくれ。
 去り際に瑞希が耳元に顔を寄せてきた。

「花音、昨日から服選びしてたぞ」
「……俺も同じことしてたって、伝えといてくれ」
「ウザ……。あ、頼まれてた苗、昼過ぎでいいか?」
「いいよ。来る前に連絡くれ」
「あいよ」

 台車を押して車に戻る。
 助手席に乗り込むと、母親が朝ごはんを手渡してくれた。
 おにぎりをかじりながら、仕入れた花のリストを母親のものと突き合わせて、店の在庫に追加して……。