翌朝、母親と花市場に行くと駐車場で花音ちゃんに会った。
「おはようございます、藤乃さん」
「おはよう、花音ちゃん。荷物、手伝おうか?」
つい、いつもの癖で言ったら、花音ちゃんが微笑んだ。
「瑞希がいますから大丈夫ですよ。藤乃さんは仕入れでしょう? 今日のオススメはカラーです。苗だとニチニチソウもご覧になってください」
「花音ちゃん、しっかりしてるわねえ。藤乃も見習いなさいよ。由紀さんのところは最後に行きましょうか。大荷物になっちゃう」
「お待ちしております」
花音ちゃんは母親に軽く頭を下げて、俺にも少しだけ手を振ってから、台車を押していった。
「藤乃?」
「うん」
「逃がしちゃダメ。でも、がっついちゃダメよ」
「あなたのお父さんも、昔ね……」
「え、それ聞く流れ?」
両親ののろけ話とか、朝から勘弁してほしい……。
ていうか、じいさんも母親も、俺が花音ちゃんを好きって前提で話すの、やめてくれないかな。……そんなに顔に出てる?
ひと通り顔なじみの農家を回ってから、最後に由紀さんのところへ向かった。
カラーはあまり残ってなかったけど、ニチニチソウはいくつかあったから、見せてもらった。
「あ、クルクマほしいな」
「いいわね。これとこれなら、どっちがいい?」
「左。茎がしっかりしてる」
「このニチニチソウは?」
「右、葉っぱがピンと張ってる」
「このベニバナは?」
「んー、真ん中のかな。花びらがきれいに開いてる」
「よろしい。じゃあ、残りの予算で藤乃がいいと思う花を選んで」
母親が頷いて一歩下がった。
そばで見ていた由紀さんの親父さんが、「おっ」と声を上げた。
「ついに藤乃ちゃんも一人前かい?」
「遅いくらいよ。でもまあ、そろそろね」
……やっと母親のテストをクリアできたらしい。
次からは、一人で仕入れさせてくれるのかも。……でも、いきなり一人はちょっと大変そうだな。
やって来た瑞希と相談しながら、どの花を仕入れるか決めていく。
「よし、これでお願いします」
「はいよ。……うん、悪くない。このクルクマ、花音の一押しなんだよな」
「あ、そうなんだ? 全部買っとけばよかった」
「でも買わないだろう? そういうとこだよ」
「えっ、それが原因で、もてないのか……?」
「違ぇよ……。ま、そう思ってるくらいの方が花音も安心だろ。よし、店仕舞いするから、帰れ帰れ」
雑にあしらう瑞希に追われて、車に戻る。
帰り道、助手席で朝飯をかじりながら、クルクマをどんなアレンジにしようか考える。
花音ちゃんみたいに、かわいくて、見てるだけで心が和らぐ……そばにいるだけで救われるような。
そんなアレンジを作りたい。
「おはようございます、藤乃さん」
「おはよう、花音ちゃん。荷物、手伝おうか?」
つい、いつもの癖で言ったら、花音ちゃんが微笑んだ。
「瑞希がいますから大丈夫ですよ。藤乃さんは仕入れでしょう? 今日のオススメはカラーです。苗だとニチニチソウもご覧になってください」
「花音ちゃん、しっかりしてるわねえ。藤乃も見習いなさいよ。由紀さんのところは最後に行きましょうか。大荷物になっちゃう」
「お待ちしております」
花音ちゃんは母親に軽く頭を下げて、俺にも少しだけ手を振ってから、台車を押していった。
「藤乃?」
「うん」
「逃がしちゃダメ。でも、がっついちゃダメよ」
「あなたのお父さんも、昔ね……」
「え、それ聞く流れ?」
両親ののろけ話とか、朝から勘弁してほしい……。
ていうか、じいさんも母親も、俺が花音ちゃんを好きって前提で話すの、やめてくれないかな。……そんなに顔に出てる?
ひと通り顔なじみの農家を回ってから、最後に由紀さんのところへ向かった。
カラーはあまり残ってなかったけど、ニチニチソウはいくつかあったから、見せてもらった。
「あ、クルクマほしいな」
「いいわね。これとこれなら、どっちがいい?」
「左。茎がしっかりしてる」
「このニチニチソウは?」
「右、葉っぱがピンと張ってる」
「このベニバナは?」
「んー、真ん中のかな。花びらがきれいに開いてる」
「よろしい。じゃあ、残りの予算で藤乃がいいと思う花を選んで」
母親が頷いて一歩下がった。
そばで見ていた由紀さんの親父さんが、「おっ」と声を上げた。
「ついに藤乃ちゃんも一人前かい?」
「遅いくらいよ。でもまあ、そろそろね」
……やっと母親のテストをクリアできたらしい。
次からは、一人で仕入れさせてくれるのかも。……でも、いきなり一人はちょっと大変そうだな。
やって来た瑞希と相談しながら、どの花を仕入れるか決めていく。
「よし、これでお願いします」
「はいよ。……うん、悪くない。このクルクマ、花音の一押しなんだよな」
「あ、そうなんだ? 全部買っとけばよかった」
「でも買わないだろう? そういうとこだよ」
「えっ、それが原因で、もてないのか……?」
「違ぇよ……。ま、そう思ってるくらいの方が花音も安心だろ。よし、店仕舞いするから、帰れ帰れ」
雑にあしらう瑞希に追われて、車に戻る。
帰り道、助手席で朝飯をかじりながら、クルクマをどんなアレンジにしようか考える。
花音ちゃんみたいに、かわいくて、見てるだけで心が和らぐ……そばにいるだけで救われるような。
そんなアレンジを作りたい。



