君に花を贈る

 次の週末、藤乃さんと須藤さんのご主人が家に来た。
 母が二人をリビングに通すと父が「来たか」と立ち上がる。

「よお、須藤。終わったら飲んでくだろ?」
「おうよ。これ、持ってきた」

 須藤さんが酒瓶を掲げて、父は目を輝かせていた。何しに来たのか分からなくて、ちょっと呆れながら振り返ると、藤乃さんと瑞希もなにか話していた。

「藤乃は? 飲んでく?」
「帰りの運転しないといけないからパス」
「じゃあ、お前の分も飲んどくわ」
「うぜえ……。あ、花音ちゃん! お邪魔してます。お義兄さん、お茶出してください」
「い、いえ……」
「お前さあ、ほんとにさあ……!」

 瑞希が藤乃さんを蹴飛ばして、私が出していたお茶を配った。
 ていうか、“お義兄さん”って……それ、どういうつもりなの。
 私がソワソワしているうちに、四人は仕事の話を始めた。
 メインで話をしているのは須藤さんで、それを父が頷いたり、質問したりしている。さっきまでとは空気ががらっと変わっていて、思わず見入ってしまう。
 藤乃さんも、ときどき質問に答えたり、逆に質問したりしていて、やっぱりかっこいい。

「花音」
「は、はい!」

 いきなり瑞希に話しかけられてびっくりした。四人が、私を見ている。

「アベリアとシャリンバイ、いくつ用意できる?」
「えっと……すぐにご用意できるのは、これくらいです。工期の後半までお時間をいただければ、こちらの数もご用意できます」
 慌てて答えたけど、大丈夫だったかな。
 四人は軽く頷いて、また話に戻った。藤乃さんも真剣な顔で話していて、それがもう、本当にかっこいい。
 私も、ちゃんとしよう。
 背筋を伸ばして、ボールペンを持ち直す。