君に花を贈る

 売れ行きを確認して、減った花を足し、しおれ気味の花に水をやる。
 葵が作ったブーケを手直ししていると、細身の青年が店に入ってきた。
 スッと背筋の伸びたそいつは鋭い目つきで店内を見回す。

「今日のおすすめは?」
「そこの黄色のチューリップ。あーでも、お前が買うなら紫かピンクかな」
「なぜ?」
「黄色のチューリップは『望みのない恋』、紫とピンクは『誠実な愛』って意味」
「……お前は、どちらがいい?」

 青年が店の奥に声をかける。
 ちょうどエプロンを外した葵が出てきて、ぱあっと花が咲くような笑顔になった。
 ……いちゃつきのネタに花を使わないでほしい。

「朝海くん! えっと、えっとね、じゃあ紫がいいな。……花言葉に『不滅の愛』っていうのもあるから」
「わかった」
「へいへい」

 紫のチューリップを一本包んで渡すと、朝海がそれをそのまま葵に手渡した。
 葵は、顔を赤くしながらも満面の笑みで受け取ってる。
 ……店の外でやってくれないかな。