「最寄り駅まで送るよ」
「遠回りになっちゃいますよ?」
「その分一緒にいられるでしょ」
「……じゃあ、お願いします」
でも、別れるのが惜しくて、なんだか言葉が出てこなかった。
次にこうやって出かけられるのはいつになるだろう。
あー、でも、ひとつだけ、言っておきたいことがある。
花音ちゃんの最寄り駅で電車を降りて、ホームのベンチについてきてもらった。
手をつないだまま、並んで座る。
「さっき言った……鈴美の話は無しにさせて。俺に復讐とかそういうのは向いてないみたい」
「……わかりました。でも、鈴美さんのアレンジに私の花を使いたいときは、ちゃんと言ってください。ご希望の品をご用意します」
「ありがと。本当はさ、恨んだってしょうがないんだよな。疲れるし、そもそも考えたくないじゃん、嫌いなやつのことなんて。できれば、もう忘れてたいよ」
思わず弱音が漏れたら、花音ちゃんがそっと俺の顔を覗き込んだ。
「忘れられませんか?」
「……んー、たまに夢に出てくるかな。花音ちゃん以外でいいなんて、あるわけないから。……また、どこか行こう」
「な、なんでそれを……? でも……はい、行きましょう。また、デートしましょう。図々しいかもしれませんけど、忘れちゃえばいいんです。私だけでいいじゃないですか」
「ほんとにね……。ありがと。遅くなるし、そろそろ帰ろうか」
ここで帰さなきゃ、本当に手放せなくなる気がした。
なんで、俺が欲しい言葉をわかってくれるんだろう。
「……わかりました。藤乃さんもちゃんと帰ってくださいね? あとで確認しますから」
「ちゃんと帰る。改札まで送るよ」
立ち上がって、並んでゆっくり改札へ向かう。
別れがたくて、つい手を強く握ってしまった。なんか、毎回こうなっちゃう気がする。
「今日は付き合ってくれてありがとうございました」
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。気をつけて帰って」
「はい。藤乃さんも」
そっと手を離す。
花音ちゃんは改札を抜けて、何度も振り返りながら歩いて行った。
手を振って、見えなくなるまでそこに立っていた。
ホームに戻って電車に乗り込む。座ったら、たぶん気持ちが崩れそうで、立ったまま外を見ていた。
「……やっぱり、欲しい」
俺は、何が何でも、あの子が欲しい。
会う前は、ただぷかぷかと浮かれてた。でも今は、体の奥が熱くて、どうしようもなかった。
「遠回りになっちゃいますよ?」
「その分一緒にいられるでしょ」
「……じゃあ、お願いします」
でも、別れるのが惜しくて、なんだか言葉が出てこなかった。
次にこうやって出かけられるのはいつになるだろう。
あー、でも、ひとつだけ、言っておきたいことがある。
花音ちゃんの最寄り駅で電車を降りて、ホームのベンチについてきてもらった。
手をつないだまま、並んで座る。
「さっき言った……鈴美の話は無しにさせて。俺に復讐とかそういうのは向いてないみたい」
「……わかりました。でも、鈴美さんのアレンジに私の花を使いたいときは、ちゃんと言ってください。ご希望の品をご用意します」
「ありがと。本当はさ、恨んだってしょうがないんだよな。疲れるし、そもそも考えたくないじゃん、嫌いなやつのことなんて。できれば、もう忘れてたいよ」
思わず弱音が漏れたら、花音ちゃんがそっと俺の顔を覗き込んだ。
「忘れられませんか?」
「……んー、たまに夢に出てくるかな。花音ちゃん以外でいいなんて、あるわけないから。……また、どこか行こう」
「な、なんでそれを……? でも……はい、行きましょう。また、デートしましょう。図々しいかもしれませんけど、忘れちゃえばいいんです。私だけでいいじゃないですか」
「ほんとにね……。ありがと。遅くなるし、そろそろ帰ろうか」
ここで帰さなきゃ、本当に手放せなくなる気がした。
なんで、俺が欲しい言葉をわかってくれるんだろう。
「……わかりました。藤乃さんもちゃんと帰ってくださいね? あとで確認しますから」
「ちゃんと帰る。改札まで送るよ」
立ち上がって、並んでゆっくり改札へ向かう。
別れがたくて、つい手を強く握ってしまった。なんか、毎回こうなっちゃう気がする。
「今日は付き合ってくれてありがとうございました」
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。気をつけて帰って」
「はい。藤乃さんも」
そっと手を離す。
花音ちゃんは改札を抜けて、何度も振り返りながら歩いて行った。
手を振って、見えなくなるまでそこに立っていた。
ホームに戻って電車に乗り込む。座ったら、たぶん気持ちが崩れそうで、立ったまま外を見ていた。
「……やっぱり、欲しい」
俺は、何が何でも、あの子が欲しい。
会う前は、ただぷかぷかと浮かれてた。でも今は、体の奥が熱くて、どうしようもなかった。



