君に花を贈る

 ゴミを捨てて、また手をつなぐ。そっと握ったら、そっと握り返されて――それだけで、なんだか救われた気がした。
 祭り会場の入り口まで戻って、気に入ったバラにシールを貼る。
 花音ちゃんのバラの前でさんざん悩んだ末に、小さな鉢を買った。

「言ってくれれば、ご用意しますよ?」
「だめだよ。プロの作品なんだから、ちゃんとお金払わせて。……これって、量産できる?」
「そんなにたくさんは作れません。優勝できたら、あちこちに卸すことになるので……たぶん、それで終わりです」
「そっか、残念」
「……もし優勝できなかったら、そのときは、よろしくお願いします」

 自信なさげに肩を落とす花音ちゃんを覗き込んだ。

「そういうこと言うもんじゃないよ」
「すみません、甘えました」
「それは全然大丈夫。いくらでも甘えていいよ」

 また歩き出す。
 屋台を見て回って、綿飴を食べて、ぶらぶらと歩き回る。
 隣に花音ちゃんがいると、つい顔がゆるむけど、それすら笑ってくれる。……すごく、許されてる気がする。

「藤乃さん、時間大丈夫ですか?」
「うん、そんなに遅くならなければ。どこか行きたいところある?」
「またバラを見に行っていいですか? その、投票がどうなったか、バラが売れたか見たくて」
「行こう」

 手を引いて戻ると、切り花は全部なくなっていた。……やっぱり、一本くらい買っておけばよかったかも。
 二人で少し離れたところから品評会の様子を眺める。他のバラも、切り花はほとんど残っていない。

「ちゃんと売れて、よかったです」
「きれいな花だから。当然だよ」
「えへへ、藤乃さんにそう言ってもらえると嬉しいです」
「……花音ちゃんって、ほんとにかわいいね」
「んっ……!? いま、バラの話してたんですよね?」

 顔を真っ赤にして慌てる花音ちゃんに触れたかったけど、両手がふさがっていた。
 片手はバラの鉢を下げていて、反対の手は花音ちゃんとつないでいる。