君に花を贈る

「ふうん。いくら?」
「別にいいよ。元々仕事でもらったやつだし。ていうかアレだね、花音ちゃんって言うの? 藤乃の好みドストライクだね」
「呼ぶな、見るな、減るから」
「減らねえよ。そういうこと言うなら、チケット返してもらうぞ」

 藤乃さんは楽しそうに話しながら手を動かしている。瑞希といるときとはまた違う雰囲気で、新鮮な感じ。
 ……ていうか、そっか。私、藤乃さんにドストライクなんだ……。

「藤乃、大学の時から背が高くてキリッとした感じの女の子好きって言ってたんだ。でも、藤乃くらいの女子ってそうそういねえし」
「……そうですね。藤乃さんの身長って、いくつなんですか?」
「183センチ」
「そうそういねえよ、そんなに背の高い女子。でも藤乃にはいたんだ。良かったね。俺にはいなくなっちゃったけど……」
「聞かないでやったのに……」

 うなだれる男性を、藤乃さんが笑いながら慰めている。
 バケツに花を移し終えて、受領書にサインをもらった。
 男性は仕事の途中だからと帰っていく。

「今、母さんいなくて店を空けられないから、送れないんだ。ごめんね」
「大丈夫です。あとで水族館にいつ行くか、相談しましょう」
「うん。楽しみにしてる。花音ちゃんも……楽しみにしててくれると嬉しい」
「はい。すごく楽しみです」

 藤乃さんに見送られて花屋を出ると、思わず早足になった。
 水族館、久しぶりだな。
 鼻歌交じりで車に向かった。
 今、あの包み紙と同じ模様を見たら、たぶんニヤけてしまうと思う。