翌日の夕方、藤乃さんからスマホにメッセージが届いた。
『役所側との打ち合わせが来週に延期になった。ごめん。デートはまた今度、お願いします』
私は静かに画面をなぞって、「大丈夫です。頑張ってください」と送信する。
電話じゃなくて、本当によかった。
喋ったら、きっと藤乃さんにはすぐ気づかれてしまう。
「仕事なんだから」
藤乃さんの仕事は、私の仕事にもつながってる。応援しないでどうするの。
スマホをポケットにしまって、温室へ足を踏み入れる。
結局、打ち合わせは、それなりにうまくいったらしい。
どうやら向こうの新しい担当者が独断で藤乃さんたちの提案を却下していたらしく、打ち合わせでは上の人が何度も頭を下げてきたそうだ。
打ち合わせが終わってすぐ、藤乃さんから電話がかかってきた。
『どうも、俺たちのことを下請け扱いだと思ってたみたいでさ。新しい担当になって、ガツンと言ってやろうとしたらしいんだ』
「……たとえ下請けだとしても、そんなふうに言うのはよくないのでは? こちらに非があるわけではないのですから」
『そうなんだけどね。あんまり相手の面子を潰すのも良くないし、できれば恩も売っておきたいからさ。担当者の意見も少し取り入れて、一部の色味や配置を調整することで落ち着いたよ。お騒がせしました』
「いえ、電話をありがとうございます。でも、今日はスーツ姿を見せに来てくれないんですか?」
『このあと、作業を一緒にやる業者さんとの打ち合わせが入っててさ。ごめんね。俺も本当は花音ちゃんの顔、見たかったんだけど』
「わ……そうだったんですね。すみません、わがまま言っちゃって」
『そんなの、わがままのうちにも入らないよ。俺だって会いたいんだから。じゃあ、そろそろ行かなきゃ』
「はい、お電話ありがとうございました。あ、明日、花屋さんにうかがいますね」
『わかった。楽しみにしてる』
通話が切れたのを確認して、スマホをそっと置き、立ち上がる。食べ終えた食器を片付けていると瑞希が昼を食べに来た。
「藤乃、なんだって?」
「打ち合わせうまくいったって。……なんで藤乃さん?」
「鏡見ろ」
言われて洗面所の鏡を覗き込むと、自分でも呆れるほど顔がゆるんでニヤけていた。
……恥ずかしい!!
『役所側との打ち合わせが来週に延期になった。ごめん。デートはまた今度、お願いします』
私は静かに画面をなぞって、「大丈夫です。頑張ってください」と送信する。
電話じゃなくて、本当によかった。
喋ったら、きっと藤乃さんにはすぐ気づかれてしまう。
「仕事なんだから」
藤乃さんの仕事は、私の仕事にもつながってる。応援しないでどうするの。
スマホをポケットにしまって、温室へ足を踏み入れる。
結局、打ち合わせは、それなりにうまくいったらしい。
どうやら向こうの新しい担当者が独断で藤乃さんたちの提案を却下していたらしく、打ち合わせでは上の人が何度も頭を下げてきたそうだ。
打ち合わせが終わってすぐ、藤乃さんから電話がかかってきた。
『どうも、俺たちのことを下請け扱いだと思ってたみたいでさ。新しい担当になって、ガツンと言ってやろうとしたらしいんだ』
「……たとえ下請けだとしても、そんなふうに言うのはよくないのでは? こちらに非があるわけではないのですから」
『そうなんだけどね。あんまり相手の面子を潰すのも良くないし、できれば恩も売っておきたいからさ。担当者の意見も少し取り入れて、一部の色味や配置を調整することで落ち着いたよ。お騒がせしました』
「いえ、電話をありがとうございます。でも、今日はスーツ姿を見せに来てくれないんですか?」
『このあと、作業を一緒にやる業者さんとの打ち合わせが入っててさ。ごめんね。俺も本当は花音ちゃんの顔、見たかったんだけど』
「わ……そうだったんですね。すみません、わがまま言っちゃって」
『そんなの、わがままのうちにも入らないよ。俺だって会いたいんだから。じゃあ、そろそろ行かなきゃ』
「はい、お電話ありがとうございました。あ、明日、花屋さんにうかがいますね」
『わかった。楽しみにしてる』
通話が切れたのを確認して、スマホをそっと置き、立ち上がる。食べ終えた食器を片付けていると瑞希が昼を食べに来た。
「藤乃、なんだって?」
「打ち合わせうまくいったって。……なんで藤乃さん?」
「鏡見ろ」
言われて洗面所の鏡を覗き込むと、自分でも呆れるほど顔がゆるんでニヤけていた。
……恥ずかしい!!



