そう言うと花音ちゃんは俺を見たまま何度か瞬きをした。
……ちょっと迷ってから、もう一度口を開く。
「それに、俺はまだ花音ちゃんに何も伝えてない。気持ちを伝えてないのに、そういうことをするのは違うでしょ。……言ったよね。俺は、花音ちゃんをちゃんと大事にしたいんだ。」
「なるほど……」
聞いていたのか、いなかったのか。花音ちゃんはふわっとあくびをして、体を起こした。のそのそと布団に潜るから部屋を出ようと腰を浮かせたら手が差し出された。
「……ちょっとだけでいいから、手を握ってください」
「……うん。ちょっとね」
「ありがとうございます」
花音ちゃんの目はほとんど開いていなくて、声も少し低く、ゆっくりと話す。
「藤乃さんのこと、好きになってよかったです。……私も藤乃さんも、四捨五入したら三十ですよ? どっちの親も、なんでまだくっつかないのって思ってますし」
なんて返せばいいのか分からないまま、花音ちゃんが「ふふっ」と小さく笑った。
「だから……手を出してもらっても、よかったんですよ? ……でも、うん。私、あなたのこと、もっともっと好きになりました。おやすみなさい、藤乃さん。また明日」
……どうすればいいんだ、俺。
好きな子にこんなこと言われて、そのまま寝られてしまって。花音ちゃんは俺の手を握ったまま、幸せそうな顔で眠ってる。
「……勘弁してくれって。生殺しでしょ」
寝顔を少し眺めて、そっと手を布団の中へ戻した。
部屋の灯りを落として、静かに扉を閉めた。
洗面所で洗濯物を干して、乾燥機をセットしておく。
自室に戻って、そのままベッドに倒れ込む。
「……ほんと、勘弁してほしい」
今夜は、しばらく眠れそうにない。
手を出さないのは、何も感じてないからじゃない。それを言う前に寝ちゃうなんて……やっぱり、生殺しだ。
……ちょっと迷ってから、もう一度口を開く。
「それに、俺はまだ花音ちゃんに何も伝えてない。気持ちを伝えてないのに、そういうことをするのは違うでしょ。……言ったよね。俺は、花音ちゃんをちゃんと大事にしたいんだ。」
「なるほど……」
聞いていたのか、いなかったのか。花音ちゃんはふわっとあくびをして、体を起こした。のそのそと布団に潜るから部屋を出ようと腰を浮かせたら手が差し出された。
「……ちょっとだけでいいから、手を握ってください」
「……うん。ちょっとね」
「ありがとうございます」
花音ちゃんの目はほとんど開いていなくて、声も少し低く、ゆっくりと話す。
「藤乃さんのこと、好きになってよかったです。……私も藤乃さんも、四捨五入したら三十ですよ? どっちの親も、なんでまだくっつかないのって思ってますし」
なんて返せばいいのか分からないまま、花音ちゃんが「ふふっ」と小さく笑った。
「だから……手を出してもらっても、よかったんですよ? ……でも、うん。私、あなたのこと、もっともっと好きになりました。おやすみなさい、藤乃さん。また明日」
……どうすればいいんだ、俺。
好きな子にこんなこと言われて、そのまま寝られてしまって。花音ちゃんは俺の手を握ったまま、幸せそうな顔で眠ってる。
「……勘弁してくれって。生殺しでしょ」
寝顔を少し眺めて、そっと手を布団の中へ戻した。
部屋の灯りを落として、静かに扉を閉めた。
洗面所で洗濯物を干して、乾燥機をセットしておく。
自室に戻って、そのままベッドに倒れ込む。
「……ほんと、勘弁してほしい」
今夜は、しばらく眠れそうにない。
手を出さないのは、何も感じてないからじゃない。それを言う前に寝ちゃうなんて……やっぱり、生殺しだ。



