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朝ごはんは、白米と韓国のり。
トマトは二切れだけ、卵とベーコンはほぐれてた。
枝豆がなんとなく夏っぽくて、少しだけ気が抜けた。

最近、氷を噛むのが癖になっている。
前までは、グラスの底で小さくなった氷しか食べられなかったのに、
今は製氷機から出したばかりのガチガチのやつを、
ためらいなく口に放り込めてしまう。

「氷を食べるのは病気だから、やめなさい」
親に、そう言われた。
“病気をやめなさい”って、ちょっと日本語おかしくない?
って思った。
だけどそれを口に出すほど、今のわたしは子どもでも大人でもない。

スマホを手に取った瞬間、声が飛んできた。

「部屋と机の上を片付けてからにしなさい。
それと、スマホ触る時間があるんだったら
コンタクトくらい自分でケアしなさい」

——ほんとは、平日だけ親がやるって決めたのに。

その声に、思ったより強く苛立ってしまった。
でもその苛立ちに、自分でびっくりしてる。
「こんなことでムカつくなんて」って思いたいのに、
ちゃんとムカついてしまっている自分に戸惑っている。

氷を噛んだときみたいに、
バキッとした音が、心の奥で鳴ってた。

昼ごはんは白米と煮物。
レバーとポテトの炒め物。
アセロラゼリーは、ギャルっぽい子にあげた。
「いる?」って聞いたら、
「え、いいの?まじ!?ありがと!!」って言われた。

私の苦手なアセロラゼリーは、
他のクラスメイトたちには大人気だった。
じゃんけんのとき、過半数が手を挙げてた。

部活の顧問に言って、
部活の時間に教室へ戻らせてもらった。
理由は「忘れ物」。
ほんとは、それだけじゃなかった。

誰もいない教室で、静かに自分の机に向かったあと、
ほんの10秒だけ、彼の席に座った。
隣の席だから、誰か来てもすぐ戻れる。
あと一週間で、席替えだけれど。

そのあと、廊下の窓からグラウンドを見下ろした。
私が退部したサッカー部が、いつも通りに動いていた。
前と変わらないように見えた。

──ひとり、残してきた女の子がいる。
その子を見るたびに、罪悪感が胸の奥で騒ぐ。
でもそれは、自業自得だ。

いじめに耐えきれず逃げたのは、私自身だから。
あの怪我がなかったら、
ターゲットは彼女だったかもしれない。
彼女がいじめられるくらいなら、
私がいじめられてよかったと、思う。

あの部活には女子が2人しかいなかった。
私と、もうひとり。
男子だらけの空気の中で、
私たちは少しだけ、浮いていた。

だから怪我をしてしまった私は、
“都合のいい的”になった。

残っていた方がよかったのか、
やめてよかったのか、
それは今もよくわからない。

……わかりたくもない。