男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 話しているうちにあのときのやらかしを思い出し、改めて恥ずかしくなってきた。

「や、でももうこの件に関してはきっちり解決済みだから! あいつも、ちゃんとオレの嘘を信じてくれたし!」

 顔を上げるとイリアスが半眼で私を見下ろしていた。

「あいつ、本当に信じたのか?」
「え?」
「だって、あいつだぞ?」
「……」

 ――あいつだぞ。

 その一言には妙な説得力があって、ダラダラと冷や汗が出てくるのを感じた。

(え……もしかしてザフィーリも、私の正体に気づいてる……?)

 確かにあの一件以降、ザフィーリとは前より話すようになったし、前より雰囲気が柔らかくなったようには感じるけれど。
 それはトーラのことをトーカの兄だと思っているからで。

 いやいやと私は首を振る。

「で、でも、その後もあいつすげぇ普通だし、きっと、や、絶対大丈夫だって!」
「……だといいけどな」

 低い声で言ってイリアスは漸くベッドに腰を下ろした。
 そしてポツリと呟いた。

「……なんか、嫌だ」
「え?」