男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 それには流石のイリアスも言葉を失っていた。

「まぁ、私のいた国は今は平和だけどな」
「……そんなヤバい世界だから、ここに残ることにしたのか?」
「え?」
「言ってただろ。帰るのやめたって」

 深刻そうに訊かれて私は思い出す。

 ――そうだ。フェリーツィアたちと話していたあのとき、イリアスも起きていたのだ。

 私はそれにも首を横に振る。

「いや、オレがこの世界に残ることにしたのは、お前たちがいるからだ」
「え?」

 イリアスが目を瞬く。

「お前やラディス、この騎士団のみんなといるのが楽しくってさ。帰りたくなくなっちまったんだ」

 少し気恥ずかしくて笑って誤魔化すと、イリアスは急に視線を泳がせた。

「そ、そっか」
「だから、これからもよろしくな。聖女って言ってもそこまで凄い力があるわけじゃないし、フェリーツィアみたいに綺麗なわけでもないしさ、これまで通り気楽に」
「お前だって綺麗だろ」

 友人がなぜかムッとした顔をしていて。

「は?」

 私は思わず、そんな間抜けな声を返していた。