男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 こんなときだというのに面倒なことを思い出してしまった。
 しかし、ラディスからの命令はなんとしても避けたい。
 そのためには私からイリアスに言うしかない。

(でも、なんて切り出そう……)

 ラディスが嫌がっているから部屋を別にしてくれ、なんて本当のこと絶対に言えるわけがない。
 自分のベッドに腰を下ろしつつ考える。

 ――お前、一人部屋の希望出さないのか?

(なんか、わざとらしいよな……)

 ――そういえばザフィーリの奴、一人部屋に移るんだってな!

(うーん、遠回しすぎるか?)

 ――お前、このままオレと同室でいいのか?

(~~なんか嫌だ!)

 小さく首を振り、思わずため息が漏れる。

 ……やっぱり、今はやめておこう。
 ラディスだってそれどころじゃないだろうし、せめてこの戦が落ち着いてから――。

「心配だよな、団長のこと」
「え?」

 顔を上げるとイリアスが気遣わしげに私を見ていた。
 私の吐いたため息をそちらの意味にとったようだ。