男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 ……フレージアが仕掛けた呪いで未だ混乱の最中にあるはずのバラノス。
 そんな中戦争をしかけたら勝敗は火を見るより明らかだ。
 だから、王は早めの侵攻を開始したのだろうけれど。
 でも、フレージアが呪いをしかけたのは、聖女である私を誘い出すためで。

(私が隠れていたから、バラノスは……)

「トーラ」
「!」

 声が掛かりそちらを見ると少し離れた場所からイリアスがこちらに手を振っていた。
 私はイェラーキの様子を見つつ、そちらへ向かう。

「やっぱ凄いな、お前。あのイェラーキが団長以外の言うことをきくなんてな」
「ふふん、いいだろ。オレも嬉しくってさ……で、何かわかったのか?」

 訊くと、イリアスの表情が曇った。

「今残ってた奴らに聞いたんだけど、ザフィーリの奴もバラノス侵攻に参加してるらしい」
「ザフィーリが!?」

 つい大きな声が出てしまったが、ザフィーリも騎士なのだ。何もおかしいことはない。
 彼にとっては今回が初陣ということになる。

「いや、俺も残っていたら参加してたんだろうなと思ってさ……」
「……」

 私が何も答えられずにいると、イリアスは小さく続けた。

「ザフィーリの奴、今どんな気持ちでいるんだろうな」

 その問いにも、私は答えることが出来なかった。