男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 厩舎の近くまで来てイェラーキから降りたラディスに、先輩たちが声を掛ける。

「団長」
「俺たちは……」

 と、ラディスは努めて冷静に答えた。

「俺は王陛下に魔女の件を報告してくる。お前たちは指示があるまで休んでいろ。トーラ」
「は、はい!」

 急に名を呼ばれ、イェラーキから降りたばかりだった私は慌てて彼と目を合わせた。

「イェラーキを頼む」
「! わかりました!」

 私はイェラーキの手綱をしっかりと握りしめた。
 そうして、ラディスは振り返ることなく早足で城内へと入っていった。

「なんか、大変なことになっちまったな」

 傍らに立ったイリアスに私は頷く。

 ――まさか、ラディス団長不在のうちにバラノスへの侵攻が……戦争が始まってしまったなんて。




「たくさん走って疲れただろう。いっぱい食べろよ」

 専用の厩舎で勢いよく干し草や野菜を食べているイェラーキに話しかけてから、私は城の方を見上げた。

(ラディス、大丈夫かな)

 それに、敵国ながらバラノスのことが気になった。