男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「言えるわけないだろ。さっきはそれどころじゃなかったし……でも、お前からは絶対に言うなよ」

 じろと睨むとラディスはふうと息をついた。

「いつまで経っても希望が出なければ、俺が言うからな」

 私はそれには答えず唇を噛んだ。

 イリアスとは友達なのに。
 ラディスが心配するようなことは、あるはずがないのに。
 わかってもらえないことが、悔しくて、悲しかった。

 それから私たちはほぼ無言で、ただイェラーキと後に続く馬たちの軽快な蹄の音だけが響いていた。



 その沈黙が破られたのは、かなり日が傾き城の塔が見えてきた頃。
 ラディスが何かに気付いたように低い声を出した。
 
「腰を浮かせてしっかり掴まっていろ」
「え? わっ!」

 ラディスが脚でイェラーキの腹を軽く蹴り、途端イェラーキは一気に速度を上げた。

(な、なんだ……!?)

 ゴールが見えて気がはやるのはわかるけれど、どうもそんな雰囲気ではなさそうだ。

 城門が見えてきて気が付いたのは、城のいたるところにこの国の紋章が描かれた旗が掲げられていること。
 その意味は私にはわからなかったけれど、なぜだか胸がざわついた。