天にはまだ星が瞬いていたけれど、遠く見える山脈の向こうがうっすらと白んでいて夜明けが近いのだとわかった。
少しひんやりとした澄んだ空気を思いっきり吸い込んだ、そのときだ。
「うわっ!?」
いきなり誰かに腰に抱きつかれびっくりする。
「イ、イリアス?」
彼はこちらを見上げ、思いっきり涙目で叫んだ。
「ムリムリムリムリ! 早く降ろしてくれ頼む!」
どうやらイリアスは高いところがダメだったらしい。
「わ、悪い。えっと、先輩たちはどこにいるんだ?」
「昨日の野営ポイントだ」
早口で答えたのは慣れた様子で私のもう片方の手を握っているラディスだ。
彼はイリアスの首根っこをむんずと掴んで怒鳴った。
「騎士が情けないぞ貴様! 早く藤花から離れんか!」
「ぎゃあーー! やめて引っ張らないで! 今はマジで勘弁してください団長ーーっ!」
お蔭で更に強く抱きしめられた私は急ぎ昨日の野営ポイントを探し始めた。
しかし眼下の深い森はまだ真っ暗で、どちらの方向に行っていいかもわからない。
(あっ、あれか?)
そのとき、細く煙が上がっている場所を発見した。きっとあそこに違いない。
私はそちらの方に向かってゆっくりと下降していった。



