「やはり行ってしまうのですね」
「!」
家の外にひとり立っていたのは、ダフニさんの傍らにいた長身の女性だ。
その得体の知れない雰囲気に思わず身を固くする。
……彼女も、私を止めにきたのだろうか。
「長老から言伝です」
「え?」
彼女は感情の読めない顔で続けた。
「残念ですが仕方ありません。聖女様がどんな騎士になられるか、楽しみにしています」
――!
それを聞いて、私の中にわだかまっていた最後の靄がさぁっと晴れていく気がした。
私は姿勢を正して彼女に言う。
「ダフニさんに伝えてください。ありがとうございます。必ず、騎士になってみせます。どうかお元気で、と」
「かしこまりました」
そうして彼女は静かに頭を下げた。
夜明け前のまだ暗い村の中を少し歩いてから、私は思い切って背後を振り返った。
「時間が惜しいし、このまま空飛んでいくか」
「は?」
「お、おい」
どうせ、イリアスにももうバレてしまったのだ。
私は目を閉じ藤花の姿に戻ると、驚いているふたりの手を強引に掴んだ。
「よし、行くぞ!」
「えっ、うそ、は!? うおわっ、うわあああーー!?」
想像していたよりずっと煩いイリアスの悲鳴を聞きながら、私たちは夜空へと飛び立った。



