男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「騎士なんて……」
「フヌーディ!?」

 姉妹のどちらかが悲鳴を上げた。
 いつの間にか彼の手には見覚えのある剣が握られていた。ラディスたちから取り上げた長剣だ。

「騎士なんて、皆死んじまえばいいんだ!」

 ラディスに向かって剣を振り上げるフヌーディ。
 ラディスはその場を動こうとはしない。

「――っ」

 しかし。
 剣を振りかざしたままフヌーディは固まったように静止していた。
 その両手が小刻みに震えている。

 ラディスの鋭い眼光に完全に気圧されていた。

 そんな彼にラディスが低い声音で言う。

「どうした。騎士が憎いんだろう」
「くっ……」

 フヌーディが悔しそうに剣を握る手に力を入れる。……でも。
 ガランっと剣を取り落とし、フヌーディはその場に力なく膝を着いた。

 それを見てほっと胸を撫で下ろす。
 ラディスがやられるはずはないと思ったけれど、それでもヒヤリとした。

「丸腰の相手に剣を向けた時点で、お前は騎士以下だけどな」

 そう冷たく言い放ったのはイリアスだ。

「……くそ、くそっ!」

 小さく何度もフヌーディが床に向かって毒づくのが聞こえた。
 そんな彼にフェリーツィアがそっと寄り添う。

「ごめんな。ずっと待っていた聖女がこんなんで。でも、守ろうとしてくれて、ありがとう」

 そう言い残して、私はラディスとイリアスと共にその家を出た。