男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 あの時、ラディスがあの場に現れたのはずっと偶然だと思っていた。
 でももし、その予言をラディスが知っていたとしたら。

 偶然ではなかったとしたら……?

「藤花は、いつこの世界に?」

 そう訊かれて、はっと我に返る。

「あ、えっと、2年前」
「では予言は間違いなかったのですね。その間、ずっと騎士団に?」
「いや、ずっとってわけじゃ……」
「その前はどこにいらっしゃったのです?」
「都の、宿屋で働いてた」

 ――そう。2年前、私はあの森でラディスに助けられ、その後彼の紹介でヴィオーラ亭で働くことになった。
 それから私が騎士見習いとして城に入るまでの間、彼は度々私の様子を見に来てくれていたのだという。
 騎士団に入ってからも、彼は男に姿を変えた私をいつも厳しく見守ってくれていた。

「宿屋……見つからないはずですね」

 フレージアが重い溜息を吐いた。
 そうだ。彼女たちはこの2年間ずっと私を探してくれていたのだ。

(私がもしあのときラディスに会わなかったら、彼女たちに保護されていたってことか)

 でも、私はラディスに出逢ってしまった。
 それが偶然か必然かはわからない。けれど私は――。