男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 ――そんなときだった。

「聖女様は渡しませんよ」
「!?」

 そんな覚えのある嗄れ声が聞こえたかと思うと、杖をついたダフニさんが私の前にゆっくりと進み出た。

「おばば様!」
「おばば!?」
「長老!」
「長老!!」

 フェリーツィアや村人たちから驚きの声、いや、歓声が上がる。
 そんな中、彼女はゆっくりと持っていた杖を彼らに向け、その先をくるりと回した。

「!?」

 途端、ラディスとイリアスがその場にガクリと膝をついた。
 そのまま地面に突っ伏してしまったイリアスを見て、私は悲鳴を上げる。

「イリアス!?」

 焦りそちらに駆け寄ろうとするが、後ろから誰かに強く腕を掴まれた。

「なっ!?」

 掴んでいたのは先ほどダフニさんと一緒にいた長身の女性だ。

「大丈夫です。眠らせるだけ」

 彼女が酷く冷静な声で言う。
 すぐにふたりの方を振り返ると、ラディスが地面に両手をついて悔しそうにこちらを見上げていた。