男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「……ははっ」

 小さく、口から渇いた笑いが漏れていた。

「出て来いよ、イリアス。先輩たち巻き込んで、オレたちを驚かせようとしてんだろ? わかってんだからな」
「トーラ」

 ラディスの声が聞こえたが構わず私は周囲を見回しながら続ける。

「なぁ、もう出てこいって! こんなの全然面白くないからな。先輩たちも、早く出て来てくださいよ! カルーシさん、ロドニーさん、ハウリーさんも!」

 しかし誰も出てくる気配はない。
 私の声は夜の森の中に吸い込まれるように消えてしまって、あとはまた静寂だけが残った。

「……ふざけんなよ」

 そう呟いてから、私はどこへともなく怒鳴った。

「おい! 魔女だかなんだか知らないけど、こんなみみっちいやり方してないで正々堂々勝負しろよ!」
「トーラ、落ち着け」

 引き留めるように肩を掴まれ私は彼を見上げる。

「でも!」
「下手に奴らを刺激するな。消えた者たちは今奴らの手中にあるんだ」
「……っ」

 ぎゅうと両手を強く握る。