男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「なんだ?」

 すぐに訊かれて私は顰めた声で言う。

「やっぱ、オレちょっと空飛んで見てこようかと思って」
「いや、今下手に動くのは危険だ」
「でも何か手がかりが見つかるかもだし」
「ダメだ」

 頑なに言われて少しムっとする。

「イェラーキが心配じゃないのかよ!」
「心配に決まっている!」

 強い口調に強い口調で返され、でも彼はすぐに謝罪してくれた。

「すまない……」
「いや、オレこそごめん……心配じゃないはずないよな」

 イェラーキはラディスの馬なのだから。
 私なんかよりも全然心配に決まっている。
 でも彼は団長だから、皆の前で動揺を見せたり出来ないだけだ。

「大丈夫だよ、きっと。さっきイリアスも言ってただろ。明日にはひょっこりと現れるって」
「……」
「ラディス?」

 その眉根が寄せられたのを見て首を傾げる。

「あいつ、お前の正体に気付いているんじゃないか?」
「え?」

 あいつって……と一拍置いてから私はぎょっと目を見開いた。

「え!?」

 ラディスが機嫌悪そうに続ける。

「お前を守りたいと言い出したときにそう感じただけだが」
「ま、まさか……」

 確かにイリアスの前で変身はしたけれど、でもあのときあいつは正気ではなかったはずで。

「でも、だって、あいつそんなこと一言も」
「だから、お前もその可能性を考えて行動しろ」

 睨むように言われて、私は何も返せなかった。

(イリアスが私の正体に気付いてる……?)

「そろそろ戻るぞ」
「う、うん……」


 しかし。

 皆のいる拠点に戻り、私たちは再び驚愕することになる。

「……っ」

 今度は声も出なかった。

 ――その場には、誰もいなかった。

 ついさっきまでいた皆が、4人とも忽然と消えていたのだ。