男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 先輩たちも焦ったように話し始めた。

「……ど、どうするんだ?」
「どうするもこうするも、馬がいなくなっちまったんじゃ動きようが」
「そうじゃない。もしかしたら次は俺たちが消える番かもしれないんだぞ」
「な、何言ってんだよ。そんなわけが」

「落ち着け」

 ラディスが低い声で窘めると、先輩たちは押し黙った。

「これで俺たちがパニックになれば奴らの思うつぼだ。どちらにしてももう日が暮れる。今日はここから動かないほうがいいだろう」

  その言葉に反対する者はいなかった。

「だが、これでこの森が当たりだという可能性が高まったな」

 愛馬が消えたというのに、ラディスはその口端を僅かに上げていた。



 馬たちと共に野営用の荷物も消えてしまったので、その夜は本当にその場で休むだけの野宿となった。
 幸い月が明るいお蔭でお互いの表情くらいはわかったが、皆不安を感じているのだろう、誰も喋らずとても静かで、結局そんな空気にいち早く耐えられなくなったのは私だった。

「心配だな、馬たち……」

 体育座りの格好で誰にともなく小さく呟く。