男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「ああ」

 頷いたのは先輩騎士のひとり、ハウリーさんだった。
 ラディスより大分歳上に見える、筋肉隆々で強面だが気の優しい先輩だ。

「その森に入った者は二度と帰ってはこないとか、逆に森に入ったはずがいつの間にか全然違う場所にいたとかな」
「へぇ……」

 確かに魔女がいるという噂が立ってもおかしくない不思議な話だ。

「死んだはずの家族や知人をその森の中で見たという話も聞いたことがあるな」
「えっ」

 神妙な顔でそう続けたのは、ラディスと同じ歳ほどの長髪をひとつにまとめたロドニーさんだ。

「だから、この森はあの世に通じてると言う人もいる」

 先輩騎士の中で一番若いカルーシさんがこちらを見てにやと笑った。

 なんだか一気に怪談じみてきてぞくりとする。
 夜に聞かなければ良かったとつい周囲を見回してしまった。

 そしてその話をまとめるようにラディスが言った。

「そういう奇妙な噂が絶えないことから、そこはいつの間にか『魔女の森』と呼ばれるようになったわけだ」


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