「そろそろ件の森だ。何か異変があったらすぐに報告しろ」
ラディスがすぐ後ろを走る皆に声を掛けたのは、あの宿を出てから2日後のことだった。
彼の言った通りここまで街や村などはなく、この2日間夜は野宿、昼間は休みを入れつつもひたすら馬を走らせていた。
(いよいよか……)
私もイェラーキの背で前方を見つめながらごくりと喉を鳴らした。
本当にそこに魔女はいるのだろうか。
あのフェリーツィアがいるのだろうか。
私は野営の際に皆と交わした会話を思い出していた。
***
「その森は、なんで魔女が住んでるって言われるようになったんですか? 見た人がいたとか?」
誰にともなく私が訊くとまず答えてくれたのは隣で干し肉を齧っていたイリアスだった。
「いや、魔女を見たって人はいないみたいだけど、昔っからそこじゃ変な噂が絶えないんだ」
「変な噂?」
そういえばラディスも「噂の域を出ないが」という言い方をしていた。



