男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 ……いや。違う。
 そういえば一度だけ念じていないのに戻ったことがあった。
 あれは私が熱を出してラディスが見舞いに来てくれた時だ。
 あのときは熱のせいだと思ったけれど、今回は別に体調は悪くない。昨日の長時間の乗馬で脚が少し筋肉痛なくらいだ。

「俺が夜中に目を覚ました時にはもうその姿だったぞ」
「は?」

 早速身支度を始めているラディスの台詞を聞いてぴくりと頬が引きつる。

「そ、それでこっちに潜りこんだのかよ!」

 そう非難の声を上げるとラディスは半眼でこちらを見た。

「お前があまりに無防備だったものでな」
「なんだよそれ!」
「それに最初に抱きついてきたのはお前だ」
「だ、抱きついた!?」
「ああ、やたら幸せなそうな顔でな。一体どんな夢を見ていたのだか」

 それを聞いて、私は夢の中でゲットできた馬のぬいぐるみを思いっきり抱きしめたことを思い出した。

(あれ、ラディスだったのか……)