男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 なんとなくデジャブを覚えつつもそう盛大にツッコミながら彼の腕を跳ね除け起き上がる。
 と、ラディスは目を覚ましたようだった。

「ああ……おはよう」

 そう寝ぼけ眼で言ってのそりと起き上がったラディスをビシっと指差す。

「おはよう、じゃない! なんでお前こっちのベッドで寝て……っ」

 そう喚きながら自分の甲高い声に気付いた。

「あ、あれ?」

 身体が、元の藤花の姿に戻っていた。
 トーラの姿のまま寝たはずなのに。

「え、なんで……」
「寝ている間に聖女の力が解けたのではないか?」

 私が混乱していると、ラディスは欠伸をしながらベッドから立ち上がった。

「そ、そんなこと、これまでは……」

 そうだ。これまでこんなことはなかった。
 戻れと念じない限り、戻ったことなどなかった。
 だってそんなことがあったら、きっともうとっくにイリアスに女だとバレているはずだ。