ラディスが入っていったのは2階一番奥の角部屋だった。
(べ、別に何もないだろ。今は任務中だぞ)
そう自分に言い聞かせながら遅れてその部屋のドアを開けると、ラディスは手前のベッドに腰掛け荷物の整理をしているところだった。
二人部屋なのだから当然だが、その向こうにもうひとつベッドが並んでいるのを見てじわじわと顔が熱くなっていく。
と、入口に突っ立ったままの私に気付いてラディスは言った。
「何をしている。お前も早く荷物を下ろせ」
「あ、はい」
そうして私は慌てて開けっ放しだったドアを閉め中へと入った。
「腹が減っただろう。このあと下の食堂で夕飯にする」
「わかりました」
そう返事をしながらラディスの前を通過し私は持っていた荷物をベッド脇に置いた。
(意識するな意識するな意識するな)
心の中でそう呪文のように繰り返していると、そんな私にラディスが訊ねた。
「疲れたか?」
「え! あ、はい。少し……」
「尻は平気か?」
「!? き、訊くなよそんなこと!」
真っ赤になって答えると、ラディスはふっと笑った。
「それでいい」
「え?」
「何を緊張しているのか知らないが、何もするつもりはないから安心しろ」
「べ、別に緊張なんて……っ」
バレバレだったかと恥ずかしくなる。
でも確かに今は任務中で、しかもこちらは男の姿をしているのだ。
何もあるはずがないとわかって、私はそこで漸く一息ついた。



