彼は自分の手とベッドについたゼリー飲料を丁寧にふき取り、私をまたベッドに寝かせようとした。
けれど私は、もう一つの生理的な欲求に支配されていた。彼に言うのは憚れるけれど、そのままの状態ではいられないので、私は顔に熱が集まるのを感じながら、彼に向かってそっと呟いた。
「綾人くん、お手洗い、行きたいんだけど……」
意を決して放った私の言葉に対して、彼はああ、と何でもないような顔をした。そして彼はそのまま私を横に抱き上げて、トイレへと私を運んだ。
彼はゆっくりと私を下ろした。けれど、彼はその場から動く気配を見せない。
さすがに、私にも人間としての尊厳がギリギリ残っているので、彼の目の前で事を致すことはできなかった。私は彼に、必死に訴えた。
「綾人くん、腕だけ、外してくれませんか」
「お前が隙を見て俺のこと突き飛ばして、逃げるかもしれないだろ」
「服まで脱がせておいて何言ってるの? こんな格好で外には出られないって、わかってて私の服を脱がせたんでしょう?」
私の切羽詰まった様子を見て何を思ったのかはわからないが、彼は懐から鋏を取り出して、ぱち、と音を立てながら結束バンドの繋がりを断ち、私の手首の拘束を解いてくれた。
トイレの扉がぱたん、と閉められて個室内にひとりになると、一気に色々な感情が沸き上がってきて、どうしたら良いかわからなくなってしまった。


