性、喰らう夢




「ほら、飲めよ」



 唇に飲み口を押し付けられたので、私は口を薄く開き、それを咥えた。

 全くお腹は空いていなかったし、それを飲みたいとも思っていなかったが、私はすこしずつ、中身を口の容量いっぱいまで吸い上げてから、ごくり、と喉を鳴らした。



「もう、大丈夫です」

「駄目。全部飲め」



 私の苦しさなんてどうでも良いような彼の物言いに絶望する。一口だけ吸い上げたそのゼリー飲料は全く減っている様子を見せていない。

 私は目をつむって、祥平のことを思い浮かべた。目の前にいるのは綾人くんじゃなくて祥平だ、と自分に言い聞かせながら、もう一度それを吸い上げる。

 けれど、そんな私の考えは彼に見透かされていたようだった。



「お前、ちゃんと目開けて、俺のこと見て」



 彼の声を綾人くんのものだと認識した瞬間、自分自身にかけていた催眠がガラガラと崩れ落ちて、私は口の中に入っていたゼリー飲料を吐き出しそうになる。

 慌てて口を押さえようとしたが、私の腕は後ろで拘束されていたので、動かなかった。唇の端からゼリー飲料がこぼれて、綾人くんの手と、ベッドにそれが落ちる。


 しまった、と思った。潔癖症の彼は、きっと自分の手とベッドが汚されたことに対して私をひどく糾弾するだろうと思ったからだった。けれど、一度吐き出したいと思った生理的な反応を止めることは中々難しい。私は結局、咳をしながらまた少し、ゼリーを吐き戻してしまった。



「ごめんなさい……」



 咳をしながら涙目になって彼に何度も謝罪の言葉を発した。彼は呆れたような顔をしたが、私を怒ることはせず、ただそのまま、中身の残ったゼリー飲料に蓋をした。