綾人くんは虚ろとした瞳をこちらに向けながら、訳のわからないことを言う。
「本当はさ、テレビとか漫画で見るような、もっとちゃんとした拘束ができれば良かったんだけど、一般的な高校生ができる拘束って、それくらいが限界なんだよな」
でもそれじゃ服も着れないだろうし、お前がここから出て行かないことに焦点を当てれば、そんなちゃちな拘束でも十分だよな? と彼は歪んだ笑みを浮かべる。
私は顔がどんどんと引きつっていくのを感じた。私がここから出て行かないように、ということはつまり、彼は私をここから出してくれる気はないのだろうか。
途端に冷や汗が流れてくる。けれど、頭がすこしくらくらするので、彼を説得して拘束を解かせようと試みるための元気がでない。もしかしたら、薬が効きすぎていたのかもしれない。
綾人くんは私をベッドに座らせたまま、一度席を外し、そして手にコンビニのビニール袋を携えて戻ってきた。
「もう夕方だから、食事、摂らないと」
彼はそんなことを言って、ビニール袋の中からマスカット味のゼリー飲料を2つ、取り出した。前に私が、コンビニで綾人くんに買ってもらったそれと全く同じものだった。
「今、何時なの……?」
「土曜日の夕方。お前、12時間くらい寝てたよ。夏目くんとしか眠れないって、あれ嘘だった?」
薬を使うのとは、また違う話じゃないか、と文句を言いかけたけれど、今この状態で彼に何をされるかがわからなかったので、やめた。
彼はゼリー飲料をキャップを外し、飲み口を私の方に近づけてくる。


