性、喰らう夢




 うっすらと境界がぼやけながらも、すこしずつ意識がはっきりとしてきたとき、私は何が夢で何が現実なのかわからなくなり、頭が混乱した。

 さっき思い出した、母親に殴られていた記憶は、何だったのだろうか。訳がわからなくなってしまって、私は自分の身体の様子を確かめようとした。


 けれど、身体が動かない。


 金縛りとか、そういった精神的かつ超常的なものではない。どちらかと言えば、物理的で人為的なものだ。


 すこしずつ、意識が外界へと向けられる。ぼうっとしているうちに、先ほどまで自分の家で母親に殴られていたあの記憶が夢だったことに気付いて、心臓の拍動がすこしだけ収まってきた。

 けれどそれと同時に、私はまだ夢を見ているんじゃないか、と自分自身の意識を疑い始めた。ゆっくりと目を開けると、無機質な部屋が見える。私は白いベッドに身を沈めながら、横を向いているようだった。



「やっと起きたか」



 頭上から、聞き慣れた声が聞こえてくる。綾人くんの声だ。目の前に彼が立っているのがわかるが、顔は見ることができない。やっぱり身体が動かない。



「綾人くん……身体のあちこちが痛くて、動けないの」

「逆だろ。動けないから痛いんだろ」



 まだ寝ぼけてんの? と言って、彼は私の頬をぱちん、と軽く叩いた。

 そして彼は私にかけられた布団を引きはがした。身体全体に部屋の冷たい空気が触れると、私の意識は完全にこちら側へと引き戻され、私は自分の状況を理解した。


 私は、両手足を結束バンドのようなもので拘束されていた。