彼は私に、睡眠導入剤というものを飲ませたらしい。学のない私には、睡眠薬と睡眠導入剤の違いなどさっぱりわからないが、つまるところ、眠りにつくための薬らしいということはわかった。
私の睡眠欲がおかしくなっていたとしても、眠らないために唇を強く噛んでいたとしても、やはり薬の力にはかなわないらしい。少しずつ、何も考えられなくなっていって、自分の思考能力の低下を感じた。
「どうして、そんなの飲ませたの?」
「言う訳ないだろ」
もう彼に何を聞いても無駄だ、と思って泣きながら立ち上がろうとする。トイレに言って無理やり吐こうと思ったからだった。けれど、ふらふらして上手く立ち上がることができない。
「おい、何してんだよ」
彼はふらつく私の身体を支えて、私をもう一度ベッドに戻した。私の身体は彼の腕によって、いとも簡単に動きを封じられてしまう。
「嫌だ、眠りたくないの」
「何でだよ」
「眠るのが怖いの」
そう彼に訴えると、彼は眉をひそめた。
「夏目くんとなら眠れるのに、俺となら怖いわけ?」
黙って頷くと、彼はますます機嫌の悪そうな顔をした。
「それって、おかしくね? お前のいじめを扇動してた夏目くんのところで眠るのが怖くないのに、何で俺じゃ駄目なんだよ」
「私だって、わかんない……」
そう言って泣きじゃくる私を見て、彼はすこしだけ困ったような顔をした。


