性、喰らう夢




 咳をする私を、綾人くんは冷たく見下ろしていた。私の舌には、まだあの液体の苦味が残っている。



「綾人くん、何、あれ」

「さあ?」



 てか、錠剤って溶かしたら駄目なんだっけ、でも多めに入れたし、と彼は頭をかしげて見せた。それを見て、私は目の前の彼が途端に怖くなった。

 彼はきっと、私に無理やり何かの薬を飲ませたのだ。



「ねえ、何の薬なの?」

「言ったらつまんないだろ。別に身体に悪いものじゃないと思うけど」



 ほら、俺だって普段から飲んでるし、と言って彼は私をなだめる。

 半分涙目になりながら、お願いします、教えてください、と彼に縋りつく。そのうち、身体が熱くなってきて、頭がぼうっとしてきた。



「効いてきたんだろ、そろそろ」

「……」

「前に話したことあったっけ。俺、医学部受験のストレスで自律神経いっちゃってて、夜は睡眠導入剤飲んでるんだ」



 別に、その辺の薬局で買えるやつだから心配すんなって、といつにもなく優しく笑う彼のせいで、私は何も言えなくなった。

 そして、さっきの薬が睡眠導入剤らしいということを認識した瞬間に、自分の身体で起きている反応が眠気だということに気がつく。

 夏目先輩といるときとはまた違う、それこそ体内で起こる化学的な反応によって、私の意識が薄れていく。こんなにも暴力的な眠気を感じたのは初めてだった。


 私は意識を失わないように、唇を思い切り噛んだ。