性、喰らう夢




 私の話を一通り咀嚼した綾人くんは、私の後頭部を掴んで、自分の方に引き寄せた。彼の手で髪の毛が雑に掴まれていて、頭皮が痛かった。それに、顔を彼の胸に思い切り押し付けられていて、息が苦しい。



「何なんだよ、お前」

「……私が悪かったの?」

「そうだよ。お前が夏目くんを誘惑したからだろ」



 綾人くんはそんな、滅茶苦茶なことを言った。彼自身も自分の発言のおかしさに気付いているようで、時折、くそ、と言いながら、私をさらにきつく圧迫した。

 苦しかったけれど、彼に泣いている顔を見られたくなくて、私は抵抗しなかった。このまま息が止まるのなら、仕方のない気がした。



「お前の言いたいことはわかってるし、俺の言ってることが間違っているのもわかってる。だけど」



 次に言葉を詰まらせたのは綾人くんの方だった。彼は深い呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと言葉を放った。



「だけど、俺はもう限界だ。俺の知らないところで、俺の知らない奴からお前が傷付けられてるのがもう耐えられない。それに、お前が俺の知らない奴から助けられてるのも」



 彼は腕を緩めて、私を解放した。そして、私に深いキスを落としていく。また、呼吸が苦しくなった。

 彼の唇が離れて、彼の顔を久しぶりにちゃんと見たとき、彼の顔から生気がなくなっていた。私はそれが見るに堪えなくて、今度は私から、綾人くんに縋りついた。