性、喰らう夢




 先輩の言う通り、私の身体が少しずつ暖かくなってきた。ブランケットの感触がいやに気持ちよくて、どんどんと意識が沈んでいく。



「ここに横になったら眠るっていうのが、きみの身体に刷り込まれているみたいだね。パブロフの犬と一緒だ」

「……」



 本当に夏目先輩が、私への嫌がらせを陰で扇動していたのだろうか。


 けれど、夏目先輩が私のことを好いている、という命題が真だとすると、全ての辻褄が合った。

 嫌がらせを受けたら夏目先輩のところに眠りに行くという私の習慣を逆手にとって、彼は私をここに来させようと、いじめを陰で扇動し、嫌がらせをエスカレートさせていた、と考えると、全てが繋がるのだ。

 そして夏目先輩は、自らの手を汚さないように、須藤さんに私をいじめるように指示していたのだろう。

 だとしたら、須藤さんが夏目先輩を嫌っている理由とは何なのだろうか。夏目先輩は、私に言うほどのことじゃないって言っていた気がするけれど、どういうことなのだろうか。


 そんな、疑問ばかりが生まれる。



「僕はね、きみのことが好きなんだ。ここに眠りに来るきみがどうしようもなく好きだけど、僕に振り向かないきみのことはどうしようもなく嫌いだな。でもやっぱり、そんなところも愛らしいけれど」



 何も考えられなくなってきた。もうすでに、私をソファーに押し付ける先輩の手は離れていた。私が動けないことを、先輩は理解しているようだった。



「おやすみ。僕の眠り姫」



 先輩は、いつものように私の額にキスを落とした。