私は、須藤さんのことを夏目先輩に尋ねるべく先輩の方を見た。
「夏目先輩」
「ん、どうしたの」
先輩は足を組み直して、頬杖をつきながら私を見下ろしてきた。うっすらと目を細めて微笑んでいる夏目先輩を見ていると、思わず眠気が沸いてきそうになって、私は慌ててその目を逸らした。
「えと、私……」
どうすれば角が立たずに、夏目先輩に嫌がらせのことと須藤さんのことを尋ねられるかを思考している間、先輩はこちらをじっと見つめているようだった。
「何だか、言葉を必死になって選んでいるみたいだね。嫌だなあ、そういうの」
「いや、そういうわけじゃ」
「じゃあ、どういうわけ? 僕はそういうの、感心しないなあ」
夏目先輩は言葉を詰まらせる私を軽い言葉でからかいながら、その瞳をずっとこちらに向けている。表情は柔らかいけれど、先輩の目だけは笑っていないような気がして、私はさらに喉の奥が苦しくなった。
「別に君が何を言っても、僕は怒ったりしないよ。でもね、言いたいことがあるなら、回りくどい言い方はしないでもらいたいね」
ほら、言ってごらんよ、と先輩が私を急かすので、私は思わず、夏目先輩に向かって、直接的に嫌がらせのことを尋ねてしまった。
「私に嫌がらせをしていたのが、須藤さんって子だったんです。それで、須藤さんが夏目先輩と仲良くしてるらしいってことを聞いて、それで……」
先輩が何か知っているんじゃあ、ないかって。
そう言葉を付け加えたとき、先輩は表情をぴくりとも動かさなかったけれど、その目をまた少しだけ細めたような気がした。


