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「ずいぶんと大きいジャージだね、それ」
生徒会室の鍵を内側からかちゃり、と音を立てて閉めた夏目先輩が、依央のジャージを着る私に向かってそんな言葉を放った。
あの後結局、私は約束通り夏目先輩のところに来ていた。私がここに来たのはもちろん眠るためでもあったけれど、依央と話した通り、夏目先輩に須藤さんとのことを尋ねるためでもあった。
「借りたんです。制服がだめになっちゃって」
「へえ。てっきりあの後、間違って違うサイズのジャージを買っちゃったのかと思ったよ」
ほら、あのロッカーの件ね、と言って、夏目先輩は棚からブランケットを取り出した。
「ていうか、制服もってことは、またひどいことされたの?」
先輩はブランケットを広げてこちらにやってくる。けれど私は、ソファーに横たわることはなく、そのまま座り続けていた。
あれ、まだ眠らないの? と不思議な顔をする夏目先輩に対して頷くと、先輩はブランケットをソファーの隅に置いて、自分はデスクの前にある古臭い椅子に足を組んで座り始めた。
「まあ、そうですね」
「それで、きみは前言ってた祥平くんにそのジャージを借りたの?」
「いや、祥平のではないです」
「ふうん。きみを助けてくれる男の子がたくさんいるみたいだね。腹立たしいな」
それは少し語弊がある気がしたけれど、私は反論せずにただ黙っていた。


