依央が夏目先輩に反応する意味がわからず、私は顔をしかめた。
「どうして、夏目先輩の名前が出てくるの?」
「俺の質問に答えろよ」
依央は至って真剣な顔で私に問いかけてきた。恨まれてる? 嫌われてる? それとも好かれてる? と聞かれて、私は夏目先輩と過ごすあの空間を思い浮かべた。
「……好かれてるような気はする、けど」
多分、と言葉を付け加える。いや、やっぱりそうじゃないとおかしい気がする。だって、私のことが嫌いだったら、あんなに頻繁に私を生徒会室に招いてはくれないだろう。
スマホが振動して、画面に夏目先輩の名前が表示された。先輩は今日も、返信が早い。じゃあ放課後待ってるね、といういつもと変わらない文面が表示されるのを見て、やっぱり嫌われているということはないだろうな、と思った。
「夏目先輩が、マナと最近仲良くしてるらしいって、他の先輩が言ってたんだ」
「え、そうなの?」
あんなに頻繁に夏目先輩と会っていたのに、全く知らなかった。でも確かに、夏目先輩との話題は基本的に私のことばかりで、よく考えれば、私は夏目先輩のことを全然知らない気がする。
「いや、万が一だけど、もしかしたらと思って」
依央がそう付け足したのを聞いて、私はどうしたら良いかわからなくなった。


