どうしてここに来てくれたのか、という問いかけに対して、依央が口を開く。
「内田とお前が教室から出て行くのを見て、変だなとは思ってたんだけど、そのあと内田が割とすぐ、教室に戻って来たんだよ」
「……そうだったんだ」
確かに内田さんは、私をここに送り届けてからすぐに戻って行ってしまった。それを見て、依央が不審に思ったということだろうか。
「それで、内田に話聞いたんだ。まあ、話を聞いたってよりは、無理矢理聞き出したんだけど」
「……脅しだね、それは」
「仕方ないだろ。それで、お前がここにいるって聞いたんだ。内田から何度も、行くなって止められて、時間食った。そんなに止めるってこと自体が怪しすぎるから、振り切って来たけど」
「なるほど……」
依央の話を聞いたら、ことの流れは大体理解できた。そしてやっぱり、内田さんを助けようとしなければよかったかも、なんて思った。
「ちなみに、依央と須藤さんは知り合いだったの?」
「中学が一緒で、たまに話すことがあったくらい」
「そうなんだ」
その話で、依央が須藤さんのことを親し気にマナ、と呼ぶ理由が理解できた。なるほど、彼らは元々知り合いだったらしい。
そうして、私たちを取り巻く人間関係について脳内ですこしずつ整理していたとき、午後の授業の予鈴が鳴った。
「あ……」
午後の授業、どうしよう、と思って依央の顔を見ると、彼は特段焦る様子を見せることもなく、ああ、と間延びしたような声を出した。
「戻らなくていいだろ。ていうか、戻れるような状態じゃないだろ、お前」
彼はあっけらかんとした表情をした。確かに、今から午後の授業を受ける気にはならなかった。私は依央の言葉に頷きながら、スマホを取り出して夏目先輩の連絡先を開き、放課後会いたい、という旨のメッセージを送った。
私の送ったメッセージには、すぐに既読がついた。
依央はスマホを弄る私の様子を見て、何かに勘付いたかのように、なあ、と私に声をかけてきた。
依央の方を見る。
私のスマホの画面を見たのかわからないが、依央は夏目先輩の名前をあげた。
「お前、生徒会長の夏目先輩と、どういう関係?」


