依央が貸してくれたブレザーを身体にかけながら、私はひとり、思考を巡らせていた。
結局、彼女たちが私に嫌がらせをする理由は、ますますわからなくなってしまった。
須藤さんは祥平の元恋人で、祥平と仲良くする私を気に入っていないらしい、というのが当初の解釈だったけれど、須藤さんの口ぶりから察するに、それもまた少し違うのかもしれない。
じゃあ、どうして。彼女は、自分の口から詳しいことは言えない、と言っていた。誰か、また別のひとが絡んでいるのだろうか。
そうやって頭を悩ませていると、依央が走って戻ってきた。その手には、ジャージが乱雑に握られている。
「ごめん。お前のジャージ、あのとき捨てちゃったから、俺ので良ければ」
そう言って依央は、私に少しだけサイズの大きいジャージを手渡してきた。ありがとう、と言ってそれを受け取ってから、私は依央に背を向けて、手早くそれに着替えた。依央は私が着替え終わるまで、少しだけ離れたところにいた。
私の制服は、ぼろぼろになっていた。シャツのボタンはほとんど全てがはじけ飛んでいて、所々破れており、スカートも縦に大きい切れ込みが入ってしまっていた。
その事実に直面するのが辛くて、私はあえて制服の話題に触れることはせず、私はずっと聞きたかったことを彼に尋ねることにした。
「依央、どうして来てくれたの?」
彼は着替え終わった私を見ると、こちらに近寄ってきて、隣にどかっと座った。


