「お前、訳わかんないこと言うなよ。結局、どういう意味?」
依央が苛立ちながら須藤さんに詰め寄った。彼女は依然として遠くを眺めながら、
「だから、詳しいことは言えないって、言ったでしょう? 察してほしいな、それくらい」
と、依央の言葉を受け流した。
察せない男って、モテないよ? と言いながら、須藤さんは依央のことを見上げている。
「なあ、お前ってもしかして」
「やめてよ。詮索するの。もう良いでしょ?」
「でも、マナだって」
「あのねえ、察してって言ってるでしょう? それ以上は自分で考えて」
依央の言葉を遮って、須藤さんは立ち上がってその場を後にした。私はそんな彼女をただ眺めることしかできない。須藤さんは、私の方を全く見ずに、いなくなってしまった。
依央と須藤さんの会話を聞いていても、私は何が何だかわからなかった。
「ねえ、依央……」
考え込む依央に向かって声をかけると、彼ははっとしたような顔をした。そして私の姿を見るや否や、気まずそうな顔をして、
「ごめん、今、何か着るもの持ってくるから、そこで少し待ってろ」
と言って、自分の着ているブレザーを脱いで、こちらに投げてきた。
私がそれを受け取ったのを見ると、そのまま彼は私を置いて、どこかに行ってしまった。


