性、喰らう夢




 綾人くんは黙って、私の首を絞め続けている。涙で視界が滲んで、彼の顔がまともに見れなくなってきた。

 限界が近づいてきたとき、私は口をぱくぱくとさせながら、彼にしがみついた。少しずつ、意識が沈んでいくのを感じて、奥底に眠っていた生への渇望が沸き上がってくるのを感じる。

 そんな私の様子を見ても、彼は手を緩めようとしない。意識が、もうろうとしてきた。



 力が抜けて、彼にしがみつく手が自然に離れたとき、彼はやっと、私の首から手を離した。

 急激に押し寄せてくる酸素の波に溺れそうになって、私は喉を鳴らしながら、今度は過呼吸ぎみに肩を上下に揺らした。

 そんな私を見て、綾人くんは私の頬をばちん、と強く叩いた。頬に感じる痛みで意識が現実へと引き戻される。彼の表情がひどく冷たかった。



「お前が望んだことだろ」



 繋がったまま、彼は私を貫いた。下腹部に感じる刺激がありえないくらいに大きくて、私はうめき声に近い声を上げた。

 私の言葉は、どうやら彼をエスカレートさせてしまったらしい。それから彼は一変して、いつも以上に荒々しく、私を痛めつけた。


 私は、これまでにないくらいの興奮を覚えていた。たぶん、綾人くんのほうもそうだったと思う。


 原始的で、野性的で、本能的で、それでいて享楽的な彼との行為が、私をより醜いものにする。私のことを助けてくれなくたっていい。こうやって、私の人間的なところを暴いて、欲を満たしてくれるなら、それで十分だ。

 それから私たちは、朦朧とした意識と現実の狭間で、お互いを強く求めた。苦しくて、痛くて、長くて、そして侵襲的な、そんな夜だった。



第2章 侵蝕 end