性、喰らう夢




 綾人くんは、私からの質問に答えずに、私をベッドの上に押し倒した。

 視界が反転して、綾人くんだけが視界に入ってくる。彼をぼうっと見上げる私に、彼はまた、訳のわからないことを口走った。



「俺は、全部に対してイライラしてんの。お前にもだけど、祥平にも、夏目くんにも、お前を傷付けた学校の奴らにもだ」

「……」

「俺はさ、お前のこと嫌いだけど、他の奴らのことはもっと嫌いなんだよ」



 彼の瞳に、私だけが映っている。彼は私の手に自分の手を絡めながら、次々と言葉を吐き出していく。



「なあ、俺は、祥平よりも、夏目くんよりも、お前のこと、」

「もうやめて、綾人くん」



 それ以上、彼の言葉を聞くのがつらくて、私は繋がれた彼の手に爪を立てた。綾人くんは、すぐに私から手を離した。

 綾人くんが祥平と夏目先輩のことをどんなに下に見ていたとしても、私にとっては綾人くんもそのふたりと同じなのだ。どうせ綾人くんだって、私を独占したいだけで、私の幸せなんてものはたぶん、これっぽっちも考えていない。

 それがどうということではないのだが、とにかく、そこまで私に踏み込まないでほしい、と思った。私の性欲さえ満たしてくれれば、他は何だって良いのだ。


 そもそも嫌がらせだって、確かに虫がロッカーに入っているとか、殴られるとか、そういった気持ち悪いことや痛いことは嫌だけれど、私にとっては食欲と睡眠欲、そして性欲を満たすことの方が何よりも重要なのだ。だからこそ、嫌がらせから私を助けてくれない夏目先輩と祥平に対して、何も思わないし、何も期待していない。

 だからもう、やめてほしい。そう彼に訴えると、綾人くんはまた傷付いたような顔をしてみせた。