綾人くんは私についた傷跡をひとつひとつ指でなぞりながら、低い声を発した。
「あのさあ、どういうこと。それ」
「……」
「お前が学校でいじめられてるって、解釈でいいわけ?」
多分それで合っているので、私は彼の目を見ながら頷いた。すると彼は眉をひそめながら、私の身体からそっと手を離した。
「何で、俺以外の奴から傷付けられてんの?」
「……ごめんなさい」
「何なんだよ。夏目くんと祥平は助けてくんないわけ?」
その言葉を耳にして、今ここにいないふたりのことを思い浮かべる。
夏目先輩は、確かに頼めば私のことを助けてくれるかもしれないが、きっと彼は見返りを要求してくる気がするし、できればあのひとに助けを求めるなんてことしたくない。
それに祥平は……いや、祥平に嫌がらせのことを話す気にはなれない。あの子たちは祥平に近づく私が気に食わないのだから、祥平に助けを求めたら、火に油を注ぐことになりかねない。
どちらかと言えば、私への嫌がらせに真っ向から向き合ってくれそうなのは、というか、実際に行動を起こしてくれたのは、そのふたりじゃなくて依央の方だ。けれど、綾人くんに依央のことを話したら余計に話がこじれる気がする。
私は、彼の言葉に頷いた。すると彼は顔をしかめて、私の腕を掴み、私をベッドへと導いた。


