彼に促されるままに靴下を脱ぐと、ローファーで踏みつけられた右足首が赤くなっていて、すこしだけ腫れていた。綾人くんはそれを見て、黙っていた。
さらに、制服のシャツのボタンをひとつひとつ、外していく。下まで全て外して、脱ごうと思ったが、それを脱いで肌を露出させてしまうのが怖くて、手が思うように動いてくれない。
シャツに手をかけたまま動けない私に、綾人くんがさらに距離を詰めてきた。
「今更だろ、そんなの。脱がせるぞ」
こくりと頷くと、彼はそっと、シャツを私の肩からずり下ろした。恐る恐る自分の身体に目をやる。
私の身体は、想像よりもひどい有様だった。
あのとき頭部を守っていた腕には、黄色い痣がたくさんできていた。肩にも、腰にも、切り傷のような跡がたくさんある。膝の他にも、いたるところに赤黒い痣ができている。
こんなにも酷かったのか、と私は自分自身で驚きを隠せなかった。なんとなく足が痛いなとは思っていたけれど、それ以上に私の身体はボロボロだったらしい。
さすがにこの状態で、転んだ、だなんて言い訳は通用するわけがなかった。
綾人くんはそんな私の身体を見て、ひどく冷たい声で言い放った。
「これ、誰にやられた? 祥平? 夏目くん? それとも前に言ってた母親?」
私はその問いかけに対して、首を横に振った。じゃあ誰、とさらに問い詰めてくる綾人くんに対して、私は言葉を詰まらせながら、
「学校の、ひと」
と、曖昧な返答をすることしかできなかった。


