性、喰らう夢



「え、何のこと?」

「だから、それだよ」



 彼の指差す方、つまり自分の足を見る。スカートが乱れたときに膝が剥き出しになっていて、そこから赤黒い痣がちらりと覗いていた。昼休みに、女の子たちからつけられた痣だった。

 途端、顔が青ざめていくような感じがした。綾人くんは私たちとは違う学校に通っているので、彼は私が嫌がらせを受けているということを知らないのだ。彼は私の身体にある痣を見て、不審そうな顔をしている。

 返答に迷いながら、転んじゃって、と言ってみたは良いものの、彼はそれを信じようとはしなかった。私の様子を見て、何かを察したらしい綾人くんは、私に詰め寄ってくる。



「さっきコンビニ行くとき、足痛いって、言ってたよな」



 恐る恐る頷いてみる。綾人くんが何やら考え事をしている。私の表情と、膝についた生々しい痣を見て、彼は何を思っているのだろうか。

 彼は私の方に近寄ってきた。



「お前、制服脱いで。全部」

「え、どうして」

「早く」



 彼が苛立った様子を見せたので、私は慌ててブレザーを脱いだ。綾人くんはそんな私の様子を、じっと見つめている。

 正直、私自身も自分の身体が今どうなっているのかわからなかった。彼女たちに暴力を受けたのは今日の話で、あれから着替えてすらいないので、自分の身体に痣があるのかどうか、それがどれだけ酷いものなのかを、自分ですら把握していなかった。

 そんな状態でやすやすと、ここに来てしまったことを私はひどく後悔した。